全国特別支援学校長会公式サイト

 

 
 
 
 
 

Q&A

 

Q. 財団法人聴覚障害者教育福祉協会が聴覚障害者教育や福祉の向上に大きく貢献していますが、その生い立ちや活動について教えてください。
A. 大正14年11月、近江の豪商西川吉之助、名古屋市立盲唖学校長橋村徳一、東京聾唖学校教諭川本字之介他の先達が日本の聾教育の口話法による改革に燃やした意欲がそもそもの基となって、東京帝国大学工学部講堂で行われた発会式で「日本聾口話普及会」が産声をあげました。

「日本聾口話普及会」は、結成以来、月刊誌「口話式聾教育」の発行、口話法の実演、講演会、聾口話教員養成講習会、国語教本、発語初歩教本等の発行等口話法の普及に大きく貢献をしました。

昭和3年徳川義親侯爵が会長に就任、昭和6年財団法人の設立が認可され、日本聾口話普及会は、財団法人「聾教育振興会」となりました。

この聾教育振興会が財団法人聴覚障害者教育福祉協会の前身です。戦時中、昭和17年には、日本聾唖教育会、全国聾唖学校長協会、社団法人「日本聾唖協会」と統合して「財団法人聾唖教育福祉協会」となり戦後の混乱期を経て、前会長今西孝雄(当時国立ろうあ者更生指導所指導課長)の呼び掛けで再建の運びとなり、昭和35年新会長に桜内義雄代議士(元衆議院議長)を決定、昭和45年には耳とことばの不自由な子の親の会、難聴児を持つ親の会との提携もなり会名も現在の財団法人聴覚障害者教育福祉協会と改められました。

全国聾学校長会との協力のもとに行った文部厚生予算獲得の運動や、全国聾学校PTA連合会の結成、耳の日運動の普及、文部省特殊教育課の実現等、この間展開された協会の運動はろう教育の振興に大きく寄与したものとして明記しなければなりません。

移動母子教室、幼児用卓上訓練補聴器配布、テレビエイド配布、教育映画の制作、特殊教育百年記念事業「聴覚障害児を育てたお母さんをたたえる会」、「聾教育百年の歩み」や「ハマナスのうた」の刊行、教材開発、教師や父母を対象とした研修会の開催、学力向上のための事業としての読字力検定試験、合奏コンクール、聴覚障害者のための高等教育進学予備校、成人発音教室、聴覚障害者のための成人講座、国際会議への関係者の派遣、韓国聴覚障害教育講習会への講師団の派遣等、協会の事業は、内外多岐にわたると同時に年々充実しつつ現在に至っています。このように(財団法人)聴覚障害者教育福祉協会は、その沿革や事業内容からみても全国聾学校長会と不離不即の関係にあると言えましょう(聴覚障害者教育福祉協会60年誌を参考)。

 

Q. 聾学校に関わりの深い研究奨励を目的とした組織にはどのようなものがありますか。
A. 聴覚障害教育振興奨励会、小川再治研究協賛会があげられます。

聴覚障害教育振興奨励会の前身を坂本研究奨励会といい、昭和50年に故坂本茂樹先生-全国聾学校長会会長、全国特殊学校長会会長、全国特別支援教育推進連盟理事長、全国聾学校退職校長会会長等ご歴任-のご遺志として聴覚障害教育振興の研究奨励を目的に、翁眉会(全国聾学校退職校長会)に寄託された100万円を基金に、その利子と年々ご遺族から寄付される運営費により規約・選考規定に基づき聴覚障害教育関係研究に対して奨励金を贈呈しています。奨励会の名称から固有名詞をはずすことが望ましいという理由で、平成15年度より聴覚障害教育振興奨励会と改称されましたが、奨励金は、1件につき10万円を限度としており、昭和52年度より現在まで多くの団体、個人(年間2件以内)が受賞しています。

小川再治研究協賛会は、東京学芸大学名誉教授小川再治先生が、東京学芸大学ご勇退を機に、永年携わってこられた聾教育並びに言語障害教育の振興発展のために役立てるということで全国聾学校長会に寄託された1,500万円を基金に平成5年度以降毎年全日本聾教育研究大会並びに全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会に各20万円の助成を行い当該教育の充実発展に寄与することを趣旨として平成4年度に設立されました。

 

Q. 全国的な研究組織には、どのようなものがありますか。
A. 全国的な組織としては、全日本聾教育研究会、全国聾学校理容科美容科研究協議会があげられます。全日本聾教育研究会は、全日聾研と略称され、全国9地区聾教育研究会を単位団体として組織され、年1回地区主管で全国研究大会を開催しています。

第1回研究大会は、東海地区(名古屋校)主管で昭和42年度に行われ、平成18年度全国聾学校長会と全日本聾教育研究会が主催団体として行うAPCD第9回アジア太平洋地域聴覚障害教育問題会議と重ねて行う関東地区主管の大会で第40回を数えます。

全国聾学校理容科美容科研究協議会は、全聾理美容研と略称され、理容科・美容科を設置している聾学校(当初27校、19年度現在22校)で組織され、年1回の研究協議会、地区別理美容競技大会等を開催しています。関西方面から起こった全国組織結成を求める声に応じて、古谷校長(大塚校)等が全校に呼びかけて、昭和32年10月に発足しましたものです。

 

Q. 全国聾学校職業教育研究会とは、どんな組織ですか。
A. 全国聾学校職業教育研究会は、全国聾学校高等部の教職員の多年にわたる要望に基づき、当峙の柳田、和田、金子、近江、村田等先輩諸校長の尽力により、昭和52年11月に設立されました。全職研と略称され、当初は全国の職業科を設置する聾学校(54校)で組織されました。機械、被服、産業工芸、印刷・デザインの4部会が置かれ、機械、被服部会と産業工芸、印刷・デザイン部会をそれぞれ隔年交互に開催してきました。

以来、その活動は、聾学校における職業教育の振興充実と教職員の資質向上に大きく寄与してきましたが、生徒数の減少及び教育改革が進行する中、一部に職業学科を廃止する学校も現れました。本研究会の在り方について検討がなされ、事務局校生野高等聾学校が平成17年度末に閉校し、だいせん高等聾学校に再編整備されること等を勘案して発展的解消し、平成17年度より再び全日本聾教育研究会の組織下に入り、「職業教育分科会」を設け、今後も研究を継続していくことになりました。

 

Q. 全国的な体育関係の組織にはどんなものがありますか。
A. 全国各地区にはそれぞれ地区聾学校体育連盟がありますが,それらを単位組織として,全国聾学校体育連盟が組織されています。昭和38年に連盟結成以来,毎年,陸上競技大会,卓球競技大会が連盟主催で行われています。また,昭和56年には,全国聾学校生徒の体育の奨励,振興を図ることを目的として,全国聾学校体育賞会が設立され,以来毎年,全国聾学校の生徒で体育に関して成績優良な者に体育賞が贈られています。この会は,全国聾学校長会,全国聾学校PTA連合会,全国聾学校体育連盟の3団体から役員がでて運営されています。

 

Q. 川本記念口話賞会とは、どんな組織ですか。
A. 川本記念口話賞会は、永年聾教育、特に口話法の普及発展に尽くされ、昭和28年3月東京教育大学国府台分校主事を最後に退職された川本宇之介先生の退職記念に、昭和30年7月に創設された。山本実「川本宇之介の生涯と人間性」によると、全国聾学校長会は、川本の永年の功績をたたえ、戦災で家を焼かれた川本に住宅を贈ろうと基金を集めた。ところが川本は「余命いくばくもない私であり、雑司ケ谷にはささやかではあるが雨露しのぐ住まいがあるから」と辞退し、川本が昭和26年、青鳥会からヘレンケラー賞を受けたその賞金を加えて「川本先生退職記念口話賞会」が成り立ったという。

会則によれば、聾者が口話を基礎として有用な社会人となることを奨励することを目的とし、聾学校卒業生で、口話を身につけるために努力し、優秀な成績で卒業する者の表彰、聾学校卒業生で、口話による言語生活を営み、かつ社会人として社会活動を積極的に行って、信頼と敬愛を受けている者の表彰の2本を事業の柱としてきましたが、会則の見直しが行われ後者はなくなりました。

平成7年度受賞した中学部卒業生14名、高等部本科卒業生61名、専攻科修了生4名と社会人1名を加え、事業発足以来現在までに、卒業生3,153名、社会人39名が受賞し、それぞれ自信をもって社会で活躍しています。

受賞者は、全国聾学校長から毎年12月末までに推薦された候補者の中から選考委員会によって決定され、賞状と記念品が贈られました。

当初、会の基金は66万円でしたが、現在はその後の寄付金等を含め330万円となりました。事務所は会創設以来、現筑波大学附属聴覚特別支援学校内に置かれ、会長、理事、評議員等の役員を、聾教育に関係のある各界の有識者に委託し運営されてきました。最後の会長は、前上越教育大学教授荒川勇氏で、全国聾学校長会会長も役職指定評議員となっていました。

川本先生は、昭和53年3月に逝去されましたが、川本記念口話賞会は、耳の不自由な子どもが、一人でも多く一日も早く正しい教育を受けてほしいという故人の遺志を広く世に伝えるため、冊子「お子さんが、聞こえない、ものが言えないとわかったら-入学前のろう児をもつお母様方へ」を作成、頒布しました。1999年8月21日をもって解散されました。

 

Q. 全国聾学校長会の専門部会には、他種別校長会にはない教育課程第二部会(20年度より専門性充実部会)がありますが、どうして設けられたのですか。また、どのような課題についての研究をしているのですか。
A.

聴覚障害教育には、聴覚活用や発音発語、読話、言語指導等に関わって、特に高い専門性が要求されることから、教育課程専門部会を、教育課程の全体的・基本的な構造に関する調査研究に取り組む教育課程第一部会と専門性の向上・充実に関する調査研究に取り組む教育課程第二部会の二部会に分けたものです。そこでは、次のような課題の解明に当たってきました。

※昭和52年度以降の教育課程第二部会研究課題

 

年度 課題 年度 課題
昭和
52
言語教育に関する調査(教科書・養訓・評価) 平成3 ろう教育における言語メディア・保護者の付添いについて
53 言語力を高めるための指導 4 聾教育におけるコミュニケーション手段の在り方
54 コミュニケーションの方法 5 聴覚活用による言語指導の徹底を図るための諸条件の整備
55 コミュニケートの各方法(口話法、同時法について) 6~8 「聾学校における専門性を高めるための教員研修用テキスト」改訂(第2版)
56 キュードスピーチの使用実態 9~11 聾教育の専門性に関する実態調査
57 手話についての実態調査 12~13 「聾学校における専門性を高めるための教育研修用テキスト」改訂(第3版)>
58 聴覚活用の実態と条件整備 14 基礎学力等の定着をめざす実践例
59 聴覚活用の在り方と指導の実際 15 乳幼児教育及び専門性向上を目指す校内研修の現状と課題について
60 児童・生徒の学力について 16~17 「聾学校における専門性を高めるための教員研修用テキスト」改訂版、進路指導資料集の作成 
61 専門性と教育課程に関する諸問題 18 「聾学校における専門性を高めるための教員研修用テキスト」改訂(第4版)
62~平成2 ろう学校における専門性を高めるための教員研修用テキストの作成(62~平成2) 22 「聾学校における専門性を高めるための教員研修用テキスト」改訂(第5版)
平成3 ろう教育における言語メディア・保護者の付添いについて    

 

 

 

Q. 理容師法、美容師法の改正が行われたと聞きますが、このことにより聾学校高等部理容科・美容科の教育にどういう影響がありますか。
A. 聾学校高等部理容科・美容科は文部省所管の後期中等教育の機関(A)であることと併せて厚生省所管の理容師、美容師養成機関・同実地習練機関(B)としての機能をもち、高等部卒業資格と理容師、美容師試験の受験資格が得られることになっている。

平成7年6月に行われた法改正は、

    (1)養成所入所資格 中学校卒業→高等学校卒業 

    (2)養成機関 1年(この後1年の実地習練)→2年(実地習練に代わる内容を含む
    ) 
    (3)特例措置として新法施行後においても「当分の間、中学校卒業者にも理容師、美容師試験の受験資格を認めるものとする」

などを改善内容として平成10年4月1日施行されました。

現在、各学校では(A)と(B)の課程を併せて3年(本科)又は3年(本科)+1~2年(専攻科)で実施しており、一部の学校では組織改編(認可変更を含む)をすることにより(1)などの新法への対応が可能と思われますが、多くの学校は年限などの改編を行わない限り(3)により対応(現状維持)せざるを得ません。まだ厚生省令の改正等による専門科目の配当時数や聾学校の場合の養成施設基準等が新たに示されていないので聾学校での具体的な対応の仕方について是非を問うことはできませんが、新法施行後も「現状の聾学校高等部理容科・美容科は存続できる」わけです。

ただ、法改正の社会的背景を直視し、(A)機能の充実をめざそうとすれば、年限の延長を含めた「将来像の検討」が求められてくるようにも思われます。

 

Q. 電波法が改正されたと聞きますが、このことによって聾学校での集団補聴器等の使用にどのように影響しますか。
A. 電波法の改正により, 40 MHz帯のFMマイクは平成8年5月27日以降使用できなくなり, 800 MHz 帯の一般用FMマイク(30ch)を利用していましたが、同時に聴覚障害教育関係者等各種団体が郵政省電波監理局に働きかけ、平成9年に70MHz帯のD形ラジオマイク(4ch)と補聴援助用ラジオマイク(15ch)計19チャンネルの教育用FMマイクの使用が許可されました。しかし、補聴援助用ラジオマイク(15ch)は周波数の帯域幅が狭く、音質や混信に対し機器本来の機能を十分に果たせない状況がありました。

欧州では、一般的に170~200MHz帯が採用されており電波効率、アンテナ効率の優位性から日本においても同帯域の採用が待たれています。平成19年5月16日の電波監理審議会の答申を受け、近々電波法の改正が行われ169MHz帯に新たに補聴援助用FMマイクが割りあてられる予定です。

 

Q. 本会の役職指定役員派遣団体の中には、全国聾学校PTA連合会や国際会議国内委員会がありますが、どのような団体ですか。
A. 全国聾学校PTA連合会(全聾P連)は、全国8地区(北海道、東北、関東、北陸、近畿、中国、四国、九州)の聾学校102校(分校を含めて)で構成されています。設立は昭和38年10月で、聴覚障害教育の振興発展に寄与し、聴覚障害児の幸福を図ることを目的としています。目的達成のために次の事業を行っています。

    各地区のPTA連合会の連絡調整
    会報・指導誌の発行
    研修会・研究会等の開催協力
    聴覚障害教育の振興と福祉増進
    関係機関への陳情・請
    願
    教育諸団体との連絡調整
    その他 会の目的を達成するのに必要な事業

会の事業の中で特色のあるものの一つは、スポーツ事業の振興です。健全な心身の育成、豊かな社会性を身に付けることを願い、聾学校の陸上競技大会、卓球大会の全国規模での開催を後援しています。これらの大会は、参加選手の交流はもとより、聴覚障害生徒のスポーツヘの取り組みの姿を通じて、聾学校の体育指導の一端並びに聴覚障害の理解を深める場となっています。

事務局所在地は東京都新宿区西早稲田2-2-8です。

国際会議国内委員会は、正式名称は「聴覚障害教育国際会議国内委員会」といいます。平成5年12月18日に現筑波大学附属聴覚特別支援学校の聾教育資料館で設立会が開催されました。目的は、「定期的に開かれる、聾教育国際会議及びアジア・太平洋地区聴覚障害問題会議に関する情報を集め、全国聾学校長会、全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会及び全日本聾教育研究会の組織を通して全国の教育現場及び関係する団体に伝える。これらの会議についての情報を、積極的に伝え多くの教師が参加・発表することで、特にアジアの諸国に我々がかつて通った経験を伝え、各々の国の聴覚障害教育に寄与したい。」とあります。

発足当初の構成機関は、全国聾学校長会、全日本聾教育研究会、全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会、筑波技術短期大学、国立特殊教育総合研究所、聴覚障害者教育福祉協会、国際会議委員の7つであったが、現在は、全国聾学校長会、全日本聾教育研究会、筑波技術大学、国立特別支援教育総合研究所、聴覚障害者教育福祉協会、全国聾学校PTA連合会、全国聴覚障害親の会連合会、全国聾学校退職校長会、聾教育研究会の9つとなっています。事務局長は筑波大学附属聴覚特別支援学校副校長が務めています。